医学部に学士編入した臨床心理士のブログ

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笠原嘉の『外来精神医学という方法』

笠原嘉先生の『外来精神医学という方法』を読んでいる。

笠原先生の本では、『精神科における予診・初診・初期治療』が有名だが、この本もまた良書である。というか、すごい好き!

引用したい文章がたくさんあり過ぎて困るが、以下に3つほど引用してみる。【】は筆者が勝手に項目づけたもの。また引用は正確な文章ではないことも明記する。

【精神療法について】
うつ病統合失調症も含めた患者さんへの心理療法。この三〇年間に大学は精神療法を教えず、関心をもたせなかったが、これからの修復はちょっと絶望的かも。
精神療法ってのは人間全体を考える、人間の成熟可能性を考えること。
脳次元に効く薬を使いながら、最上部の人間次元まで、家族のことも含めて視線を向ける。
――15

 

 

【医師ー患者関係】
薬物療法とか心理療法とか認知行動療法とか、個別の治療法を行う「以前」のところにある、医師ー患者関係がアルファでありオメガである。
時々患者さんが、本当かどうかわかりませんが、いっぺんもこっちを向いてくれない先生だったので、決心して病院を変えました、などという。他の科はともかく、精神科はちょっとの時間でも正対しないと悪い。診察室では感情診断とかラポールとかが大事、診療室の一番のベースには感情の問題があると思う。
ーー7
 
【理念型】
マックスウェーバーの言葉。理念型に照らして、はじめて実在の個々の患者を観察し比較し秩序づけることのできる、基本概念。
 ーー38

 

 
 確かに、精神療法の重要性を説く世代は50代後半~60代以降の先生が多い。そして私はそういう先生たちに憧れて精神科医を目指した。少なくとも私は精神療法を重視していきたい。
 
理念型については、典型的イメージ、イデア的なことを連想した。まず神経症のイメージがあって、それと比較して眼前の患者はどの程度合致しているか否かを見る、ということが重要だろう。DSMの診断基準も、イデアの特徴を個別に記述したものであり、イデアから診断基準は作れるが、診断基準からイデアは作れないのが、肝要な点だと思う 。そうした神経症自体のイメージを膨らませるためには、やはり人間知が必要であり、ラポール形成などによる人間同士の対面がその礎になると考える。